「できるシリーズ」25周年、本当におめでとうございます。

できるシリーズといえば、何かしら新しいソフトウェアを使い始める際、入門書が欲しいなと思ったら書店でまず最初に手に取る「外れなし」のシリーズ。一読者としては、まさに老舗の安心感といったところ。

そして2015年には幸いなことに、できるシリーズのサブシリーズである「できるポケット全事典」シリーズとして『できるポケット HTML5&CSS3/2.1全事典』(2020年2月14日には大幅に加筆を行った『できるポケット Web制作必携 HTML&CSS全事典 改訂版』が発売されました)を執筆させていただいたことで、著者としてもこの歴史あるシリーズに携わることができ、個人的にも思い入れの深いシリーズです。

まさかリレーコラムにまで参加させていただけるとは思ってもみませんでしたので、とても光栄です。今回「私と"できる"」をテーマに、とのお話でしたので、僭越ながら少し書かせていただきます。

「できる」と思えば道は開ける

まず簡単に私の今の仕事を説明させていただくと、いわゆる「Web制作会社」を経営しています。経営といっても社員さんを何十人も抱えるような立派な会社ではないので「プレーヤー兼」なのですが。

私はこの業界で、最初はフリーの個人事業主としてお仕事を始め、その後、Web制作会社に就職して数年間勤めてから、再び自分の会社を立ち上げて独立するという経緯で今に至っています。

私が初めてクライアント企業のWebサイトをゼロから立ち上げるというお仕事をいただいたとき、当たり前ですが、私には「個人のWebサイトを作った」という実績しかありませんでした。

個人の責任で好きに作っていればよかったWebサイトを、「仕事としてお金をいただいて」「ほかの人のために作る」というだけでも初めてのことなのに、さらにそのWebサイトを利用する方々に満足していただき、最終的にはクライアントに喜んでもらえるような仕事が自分にできるのだろうか......という懸念は、当時まだ20代半ばの若造だった私を少しだけ萎縮させましたが、それでも「まぁできるでしょ」と開き直って取り組むことで、それが結果的にはのちの仕事につながり、今に至る最初のステップになりました。

もちろん、今と当時では業界の事情が異なりますし、比較的おおらかな時代で恵まれていたというのはありつつも、実績のない私に責任の大きな仕事を任せてくださったクライアントには感謝しかありません。

一方で、もしその話をいただいたとき、私が「自分にはそんな責任のある仕事はできない」「自分にはまだその準備ができてない」と考えてお断りしていれば、もしかすると今の自分はなかったのかもしれません。

気持ちだけでは越えられない壁は当然ありますが、それでも「自分ならできる」と思い込むことは、新しいことにチャレンジするうえでとても重要なことだと気付かされたよい経験でした。

「ちょっと無理かも」が「できた」という経験が宝

同様に、私が初めてWebデザイン専門誌への寄稿のお話をいただいたときも、この「できる」という思い込みで一歩踏み出したことが、「文章を書く」ということへの興味を深め、のちの書籍執筆にもつながりました。

当時、私がブログで書いていた内容を見てくださった雑誌の担当者様から、「特集記事を書いてみませんか?」というお話を頂戴し、書かせていただいたのが最初ですが、「間違ったこと書いたら雑誌の信頼にも関わるよね」「印刷物ってブログと違って後から間違ってました~って気楽に修正できないよね」などといろいろ考えて、とても緊張したものです。そこには「業界内で無名の俺なんかが書いて何か言われない?」という心配もあったと思います。

しかし、そこも「できる」と気持ちを切り替えて書かせていただきましたし、その後、当時の会社の同僚と共著という形ですが、書籍を書きませんか? というお話をいただいたときも、「今の自分には少し荷が重いな」と思いつつも「できる」精神でやりますと即答したのを覚えています。通常業務との両立で執筆が遅れたりと、当時の担当者様には多大なご迷惑をかけたりもしましたが......

加藤善規さんの著書

初めて執筆させていただいた書籍(左)。上梓したのはもう13年も前ですが、今でも思い入れのある1冊です。

思い返せばその時の自分の実力、能力に対して、少しだけ背伸びをしないと乗り越えられなそうな事柄に「できる」精神でチャレンジすることが、結果的に自分の新しい可能性を開いたりするきっかけになるんじゃないかなと今では思います。

技術の進歩やトレンドの移り変わりが速く、現状維持ではどんどん時代遅れになってしまう世の中だからこそ、常に自分の中での「できる」を広げていく努力が必要ですし、自分自身がそのモチベーションを失わない間は何とかなるのかな、などと楽観的に過ごす日々です。

「できる」はうれしい

話は変わりますが、私は小学校低学年のころから剣道とサッカーを長いことやってきて、特にサッカーやフットサルは社会人になってからも30代になるまで仲間とチームを作って試合や大会に出たりと、けっこう本格的にプレーしていました。スノーボードなどのウィンタースポーツも若いころはかなりハマって冬は山に通いまくりましたが、ある年齢を境に、引退というほど大げさなものではないですが、いったんすべてから離れました。

別にスポーツ自体が嫌いになったわけではなく、このくらいの年代で多くの人が経験することだと思いますが、いろいろと仕事が忙しくなってまとまった時間が取りにくくなったり、人によってはお子さんが生まれたりして仲間内で集まるのも大変になり、そういう「調整」が面倒になったこともあって、仲間と集まったり遠出をしたりしなくても、自分ひとりで好きなときに、短時間でもサッと楽しめるスポーツに切り替えようと。

そんな流れの中で最近たどり着いたのが「筋トレ」と「キックボクシング」。筋トレは学生時代に部活の関係でちょっとだけやったことはありますが、本格的にやるのは人生初のこと。格闘技は昔から観るのは好きでしたがこちらはまったくの未経験です。

2年ほど前から始めた筋トレに関しては、最初が肝心だし、怪我したりもしたくないということで、正しいやり方をプロに教えてもらおうと、1年間ほどパーソナルトレーナーさんにお願いして基本的なことから教えていただき、結果的にどっぷりハマって、自宅にトレーニングルームを作るまでに至りました。

加藤善規さんの著書

一度ハマるとこだわり出す性格の私は、自宅にトレーニングルームを作るに至りました......

キックボクシングはまだ始めて2か月程度ですが、近所で見つけた格闘技ジムに入会して、仕事の合間に時間ができると、仕事場を抜け出しては基礎からの練習に精を出しています。

加藤善規さんの著書

週に1~2回のキックボクシングジム通いも楽しみな今日このごろです。

どちらも人生で初めて経験するスポーツ(筋トレをスポーツと呼ぶかは別として)ですから、イチから動きを習得していかなければならないわけです。しかし、それは逆に考えれば、日々やるごとに今までできなかった新しいことが「できる」ようになるということ。

最初は思うようにできなかった動きも、徐々に頭と身体がコツをつかんで形になりはじめる、あるいは先月は上がらなかった重さのバーベルが上がるようになる......。別に何か特別な目標があるわけでもないのですが、40歳を過ぎて、自分に「できる」ことが増えていく喜びや楽しさを、あらためて感じさせてもらっています。

「できる」が増えるのはうれしい。

スポーツに限らず、仕事でも趣味でも、すべてに共通することでしょう。何か新しいことに取り組もうとするとき、丁寧、かつわかりやすい解説で「できる」へと導いてくれるできるシリーズも、この25年間でたくさんの読者さんに「できる」喜びを与えてきたものと思います。そんなできるシリーズが、今後とも末永く愛されるシリーズとして発展していくことを願って、コラムを締めさせていただきます。


加藤善規(かとう よしき)

加藤善規(かとう よしき)
バーンワークス株式会社 代表取締役

埼玉県出身。サッカー、フットサル、モータースポーツ観戦、格闘技観戦、インターネット、音楽鑑賞、筋トレ、腕時計収集が趣味。サッカー4級審判員、ウオッチコーディネーター(上級 CWC)資格認定者。
フリーランスによるWebサイト制作業務等を経て、2004年よりWebサイト制作会社に所属。同社取締役、制作部門統括を務めた後、2014年にバーンワークス株式会社を設立。同社代表取締役に就任。Web系フロントエンド技術、及びIA、ユーザビリティ、アクセシビリティを主な専門分野とし、Webサイト制作ディレクション業務、コンサルティング業務の他、セミナー等での講演、執筆も行う。

バーンワークス株式会社

加藤善規さんの著書

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