Windows 7の発売に合わせて、各PCメーカーから新機種が発売になります。新しいOSに対応し、どのような新機能、新要素が盛り込まれるのでしょうか。

現在3、4年ぶりぐらいにPCを買い換えるため情報を集めている、という方も多いのではないかと予想されます。3年ほどの間でPCはどのように進化し、どのような新しい体験ができるのか、各メーカーに話を聞きに行きました。第3回は富士通のWindowsタッチ対応ノート「FMV-BIBLO MT」です。

新機能「Windowsタッチ」を、まずは初心者向けに

富士通は、Windows 7の新機能のひとつ「Windowsタッチ(マルチタッチ)」に着目。これまでタブレットPC「FMV-BIBLO LOOX P」シリーズを開発してきた技術を活かして、Windowsタッチ操作に対応したミドルクラスのA4サイズノートPC「FMV-BIBLO MT/E50」を発売しました。


「FMV-BIBLO MT/E50」。ディスプレイに指で触れるタッチ操作だけでなく、付属のペンによる操作も可能です


「PCを操作するためのマウスとキーボードというデバイスは、もう何十年も進化していません。タッチ操作がWindowsの標準となることで、新しい操作、新しい使い方が生まれる可能性を考えてみたいのです(富士通 藤田康夫氏)」


富士通 パーソナルマーケティング統括部 コンシューマPCグループ プロジェクト部長
藤田康夫氏

Windowsタッチに着目した富士通は、これを何のために利用するかを考えました。「今回はまず、初心者の方が『パソコンを操作する』ということの敷居を下げるための機能として搭載しました。現在のマウスやキーボードが難しい、と感じている方もいらっしゃいます。そうした方が、パソコンに触れてみようという意欲を持っていただくきっかけになればと考えています(藤田氏)」。

FMVの2009年冬モデルでは、「BIBLO MT」のほか、ディスプレイ一体型デスクトップの「DESKPOWER F」シリーズと、中高年をターゲットにした「らくらくパソコン」のデスクトップモデルでWindowsタッチに対応しています。


ディスプレイ部分を反転させ、キーボードの上に折りたたんだ形での操作もできます。ディスプレイには汚れがつきにくいコーティングを施しているとのこと


「タッチ操作パネル」などで使いやすい環境を整備

Windowsタッチ対応のFMVは、富士通オリジナルのタッチ操作用メニュー「タッチ操作パネル」を搭載しています。Internet Explorer(Windowsタッチによる拡大・縮小やスクロールが可能)やその他のWindowsタッチ対応ソフトが選べます。

文字入力用の「タッチ文字入力」では、予測変換機能が日本語入力を支援します。また、プリインストールしている富士通製の写真管理ソフト「マイフォトビューアー」やメディア管理ソフト「3D Media Surfing」なども対応しています(「3D Media Surfing」は一部の操作のみ対応)。


デスクトップの右側に表示されているのが「タッチ操作パネル」。Windowsタッチに対応したソフトの起動メニューのほか、[ウィンドウを閉じる]、[印刷]といった使用頻度の高い機能をタッチで呼び出せるようになっています

Internet Explorer利用中はタッチ操作パネルが「インターネットモード」に代わり、タブやお気に入りの操作ができます

「Corel Paint it! touch」は、タッチ操作で絵が描けるペイントソフト。写真の上からイラストを描くこともでき、これからの年賀状シーズンにも活躍できます

「Microsoft Surface Globe」はWindowsタッチの操作性を体験できる地球儀ソフト。移動や回転、拡大、縮小などの操作がスムーズに行えます

「Microsoft Surface Collage」は、写真を並べて「コラージュ」が楽しめるソフト。できたコラージュをファイルに保存することもできます

予測変換機能付きの「タッチ文字入力」。Webブラウザーなどと組み合わせて利用します


「Windowsタッチの新しい使い方を見つけてほしい」

筆者はキーボードとマウスの操作に十分慣れており、Windows 7の情報を見ても、タッチの必要性は感じていませんでした。それでも、「BIBLO MT」の実機に触れてみると、12.1インチのディスプレイを直接タッチ操作することの、独特のおもしろさを実感できました。

画面を見ながら「これは何だろう?」という好奇心をそのまま操作に反映させる感覚、手元のマウスではなく、画面に映るものに直接触れ、動かすという感覚は、これまでにないものです。「iPhone」や携帯電話のような小さなデバイスとも操作感が少し異なり、指先ではなく手や腕全体を使って動かしているような感じがします(2本指を使った拡大、縮小の操作は、片手よりも両手の指1本ずつで行った方が反応が良いです)。ディスプレイをたたんで、水平の状態で利用するのが楽しいです。

また、物珍しいこともあって社内のスタッフの多くが興味を示しました。小さい子どもの興味を引きつけるのにも有効で、Windowsタッチが新しい操作概念やユーザー層を作っていく可能性は、確かにありそうです。

一方で、まだまだ十分に環境が整っていないと思える部分もありました。マイクロソフトがWindowsタッチのデモとして提供している「Microsoft Surface」シリーズ以外のソフトでは、タッチ操作への反応がいまひとつだと感じることがあります。

また、タッチ操作が快適にできるのは対応アプリケーション内に限られ、例えば「スタート」メニューなどを操作しようとするとメニューが小さすぎてミスタッチが増えてしまいます。「タッチ操作パネル」によく使う機能のメニューが表示されることで、こうした問題が軽減されてはいますが、PCの全ての機能を快適に利用しようとするならば、やはりマウスやキーボードが不可欠です。

Windowsタッチはまだ登場したばかりの機能であり、対応ソフトやWebサービスの登場といったことも含め、これから環境が整っていくと富士通では考えているそうです。ユーザーからの反応を見ながら、これからもっと大画面の機種で対応していくか、小さいマシンに搭載すると良いのか、などを検討していくとのことです。

「技術的には、タッチではなくてジェスチャーによる操作(カメラでユーザーの動きを認識し、ディスプレイに触れなくても操作できる)も可能なのです。操作ではない動きをどう見分けるのか、という課題はありますが(藤田氏)」といった可能性も含め、富士通では、上級者の方にもWindowsタッチを体験し、新しい使い方を見つけていってほしいと考えています。



タッチ操作の様子を動画で紹介します。こちらは「Microsoft Surface Globe」を操作しているところです


こちらは「Microsoft Surface Collage」


Windowsタッチはまだ早すぎる? いち早く体験したい?

現在のところ、Windowsタッチ対応のPCを購入しても、その機能を十分に活用できるソフトは多くありません。「BIBLO MT」のCPUやメモリーなどのスペックは、タッチ機能のぶん、同価格帯のPCよりも多少劣ります(インテルCeleron 2.2GHz、メモリー2GB、HDD320GB)。タッチに手を出すのはまだ早い......という判断もあるでしょう。

一方で、いち早くWindowsタッチを体験することの楽しさも、捨てがたいものがあります。好奇心の強い方や、家族や身近な人にパソコンを勧めたいのになかなか興味を持ってもらえないという方に、おすすめしたいPCです。