小さな習慣で、人生を変えてみませんか?

人生を変えてみたい、今よりもよくしたいと思っている人は多いはずです。しかし、変えたいと思う方向にどのようにしたらたどりつけるのか、どのように「今の自分」と「理想の自分」のギャップを埋めればよいのかがわからず、悩んでいる人がほとんどでしょう。

書籍「iPhone習慣術」では、そうした思いを持つ人たちが徐々に自分を変えていくための、iPhoneを活用した「習慣」の身に付け方を解説します。そして、以降のレッスンでは「iPhone習慣術」の1-1節の内容を公開します。

「iPhone習慣術」の特長は2つあります。1つは「小さな目標から徐々に習慣を身に付けていく」というアプローチを徹底している点です。全部で14の習慣を解説していますが、いずれも最初は簡単なことから始め、1カ月~数カ月程度の時間をかけて、段階的に習慣を身に付けていく手法を取っています。失敗しそうなときのリカバーの方法も解説して、習慣作りの挫折を経験し、苦手意識を持っている人にも取り組みやすい内容としました。

もう1つは、書名のとおり「iPhoneを活用する」という点です。習慣を身に付けるためには「時間に正確に行動する」「記録を取り、見返す」ということが重要になります。しかし習慣作りに不慣れな人は、そもそも時間に正確な行動や、記録が苦手であることが多いものです。

ところがiPhoneを利用すれば、各種アプリを活用して、時間に正確な行動が取りやすくなります。しかも、iPhoneは常に持ち歩いているので「アラームに気付かない」というようなことが起こりにくいのも利点です。

また「記録」も、iPhoneが得意とするところです。昨今ではさまざまな活動の記録をデジタルで残す「ライフログ」という言葉が注目されていますが、本書では、まさに生きたライフログを取り、役立てる方法を何通りも紹介します。

それ以外にも、ダイエットであればカロリー計算、家計簿であれば収支の計算が容易になるなど、iPhoneを習慣作りに活用するメリットは絶大なものがあります。

小さな変化の積み重ねが自分を変えていく

ブログ「Zen Habits」の書き手であり、邦訳もされたベストセラー「減らす技術」の著者であるレオ・バボータ氏は、ブログを始める前は肥満気味で、喫煙をやめたいのにやめられず、しかも経済的に困窮して、仕事にも不満を持っているという、どこにでもいそうな不幸を抱えた人物でした。

彼がその状況を変えるために選んだ方法は、小さな目標を設定し、クリアしていくことで「少しずつ習慣を変えていく」という方法でした。例えば彼は運動を始めるとき、最初は1日あたり5分だけでいいと自分に言い聞かせて外出します。5分ではほとんど運動になっていないと思われるかもしれませんが、彼は外出しないよりはましだと前向きに捉えて、とにかく外出するようにします。

すると、日が経つにつれて、この5分が10分に、10分が30分にと増え、また「ただ外に出る」ことが「散歩をする」や「軽く走る」ことに変化していき、彼の中で「運動すること」への心理的なハードルが低くなっていきます。いきなり「禁煙!」と宣言するのでも「今日から毎日10キロ走る!」などと壮大な目標を掲げるのでもなく、目先の小さな目標に集中したのです。

私は2、3年前まで「走るならば5キロ以上でなければ記録するに値しない」などと自分でハードルを上げてしまい、結局何もできないということがよくありました。しかし発想を変え、iPhoneで「今日は5ページ読書できた」「今日は20回腕立て伏せができた」というように細かい記録を取っていくことで、徐々に小さな目標をクリアできるようになった経験があります。そして、こうした小さな変化の積み重ねが、やがては何冊もの読書や、体調管理の自信といった実感につながっていきました。

行動のための心理的なハードルが低くなりきった、実行しないことの方が難しいくらい行動が生活の中に定着した状態を、「習慣が身に付いた」と言います。習慣化の目標は「何日続けるぞ」とか「これだけ達成するぞ」というようにハードルを上げる行為ではありません。どれだけハードルを下げられるか、それが成功の決め手となります。

習慣にしたい行動を「トリガー」で促す

行動を習慣として定着させるには、ハードルを十分に低くすることと同時に「トリガー(行動を起こす引き金)」と「ログ(行動の結果の記録)」の2つを活用することがカギとなります。

「トリガー」は、あなたが意識しないところにも無数に存在しています。寝る前に歯を磨く習慣が身に付いている人にとって、「寝る前」というタイミングを意識することが、「歯磨きをする」という行動に対するトリガーとなります。また、食後に必ずたばこを吸ってしまう、仕事を帰りにいつも同じ自動販売機の前を通るとビールを買ってしまう、というような、ネガティブな行動にもトリガーがあります。

本書ではトリガーとして、あらかじめ設定した日時にアラームを起動できるリマインダーアプリ『Due』を利用します。『Due』は手軽に扱えるシンプルなユーザーインターフェースと、複数のリマインダーを扱い、繰り返しの設定なども自在にできる拡張性の高さが特長です。習慣作りのタイムキーパーとして、フルに活用しましょう。

生活の中に戦略的にトリガーを配置することで、今の行動をほんの少しだけポジティブな方向に変えることが可能です。例えばむだな残業を減らそうとしているのなら、本来帰りたい時刻にリマインダーで「帰らないの?」とメッセージを表示させるなどして、さりげなく注意を喚起することができます。

トリガーは、惰性で行動しそうな分岐点に置かれた標識のようなものです。どちらでもよいのなら、私たちは楽な道、今まで繰り返してきた日常の行動を選んでしまいます。しかし、そこにさりげなくトリガーが存在して、方向性を示してくれることで、ほんの少しだけ行動を変えられるのです。

小さな変化も見逃さないように「ログ」を取る

トリガーとともに意識したいのが、「ログ」=記録です。NHKのテレビ番組「ためしてガッテン」で、「計るだけダイエット」という取り組みが行われています。その名のとおり体重計で体重を量るたけのダイエットで、がんばって運動をしたり、食事のカロリーを計算したりすることはありません。毎日、体重計に乗って体重を意識するだけで、ゆるやかなダイエット効果があるのです。

「計るだけダイエット」がうまくいくのは、客観的な数値(体重)として自分の現状を知ることが、変化へのきっかけになるからです。ダイエットに限らずあらゆる習慣作りの成功のために、「客観的な数値として現状を知る」ことが想像以上の力を発揮します。

iPhoneには、さまざまなデータを取って現状を知り、それを記録するためのアプリが多数発表されています。本書では、各節で取り上げるテーマに合わせた習慣作りを支援するアプリと、データの長期的な保存、管理や閲覧に適したアプリ『Evernote』を利用して、記録を取っていきます。

『Evernote』は「ノート」として、テキスト、写真、音声など、あらゆる形式のデータを取り込むことができ、体重記録であれ、睡眠記録であれ、ユーザーは自由な形式で記録を取っていくことができます。また、ウェブ上のサービスや他のアプリとの連携、メールによる投稿機能など、多様な方法でデータを取り込めることも特長です。

周囲の人の力を借りることも欠かせない

習慣を作り、人生を変えようというときに忘れたくない、もうひとつの重要なことがあります。応援してくれる周囲の人の声です。

1人ではとても登りきれなかった山も、友人とはげまし合って挑戦すれば、頂上までたどりつけるものです。早起きをしようとするときにも、ダイエットを始めるときにも、運動を続けたいと思ったときにも、家族や友人の助力やアドバイスを得ることは、やり遂げるために欠かせないということが知られています。

たとえ小さな目標であっても、自分が取り組もうとしていることを周囲の人に打ち明けてみましょう。1人でひっそりと習慣作りに挑戦するのでなく、「あの人が自分の取り組みに注目している」という意識を持つことで、怠けようとする自分を律することができるようになるはずです。

周囲にこうした打ち明けごとをする適当な人がいない場合は、『mixi』や『Facebook』のようなSNSを利用してもいいでしょう。本書では、iPhoneから利用しやすく、一般的なSNSよりも周囲の人との関係性がゆるやかな『Twitter』を利用して、自分の取り組みや、その記録をさりげなく共有する方法を解説します。

iPhoneと一緒に、小さな変化を起こし続けていこう

『Due』のリマインダーからのアラームで行動を開始し、その結果を『Evernote』に記録し、『Twitter』に共有して周囲の人から助けをもらう、という3つの連携に「やる気」や「根性」が含まれないことは非常に重要な点です。

やる気を出すのはとても大事ですが、ついつい欲ばってしまうことで、ハードルを上げることにつながりかねません。それよりは、やる気を必要としない小さな変化を長く起こし続けることで、大きな成長を生み出すほうが現実的なのです。

iPhoneからのアラーム、『Evernote』に蓄積されるノート、そして『Twitter』を通じて届くはげましが、ゆっくりと、しかし確実にあなたの人生を変えていきます。

iPhoneはその変化を生み出す扉となるのです。