購入後に後悔しない機種選びをするために

 これからミニノートPCを購入する方のために、いくつかのチェックポイントを紹介しましょう。代表的な機種のスペックは「ミニノートPC(ネットブック) スペック比較表」に掲載しているので、併せて参照してください。

0.全体のデザイン

 「常に持ち歩いて使う」ことを考えると、ミニノートPCの軽さや持ち運びやすさはもちろん、お気に入りのデザインであることも重要です。2009年5月現在では、メーカー各社のラインアップが増えたことにより、シンプルなビジネス系からカラフルなかわいい系、いかにも「メカ」な質実剛健系まで、多彩な魅力を備えたデザインがそろっています。好みに合わせて選びましょう。

 また、2009年以降に発売されたミニノートPCには、薄型化の傾向もあります。スリムでスタイリッシュなだけでなく、バッグに出し入れしやすいという実用性も注目すべきポイントです。

ビジネスユースに適したデザインと、金属製ボディによる高級感を実現している

0.キーボードの打ちやすさ

 ミニノートPCは低価格化が進んでいる割に、キーボードの質はあまり下がっていないと筆者は感じています。しかし中には、低価格化の影響がそのままキーボードに出てしまっている機種もあるので、店頭でのチェックが欠かせません。

 キーボード選びでは、まずキーピッチ(キーとキーの間隔)がポイントです。ミニノートPCでは小さなボディにキーボードが詰め込まれているので、B5〜A4サイズのノートPCなどに比べてキーピッチが狭くなっており、打ちにくさを感じることがあります。逆に手の小さい人は、キーピッチが狭いほうが打ちやすいかもしれません。

 また、[Ctrl]キーや[半角/ 全角]キーを中心に、キー配列が変則的になっている機種も多くあります。ただ、よほどひどい配列でない限り、筆者の経験では意外と慣れるものです。

 慣れることが難しいのはキーの硬さの好みです。硬すぎるキーボードは長時間打っていると疲れますが、逆に柔らかすぎると正確に打てたか不安に感じ、かえってストレスになることがあります。実際に実機で確かめてから購入することをおすすめします。

キーピッチは約17.5mmと打ちやすい。配列も一般的

主要キーは約16.5mmあるが特殊キーは狭く、配列もやや変則的

0.ポインティングデバイス(タッチパッド)の使いやすさ

 ミニノートPCのポインティングデバイスはタッチパッドが主流で、MacBookやiPhoneのようなマルチタッチに対応したものも増えています。タッチパッド以外では、ソニーのVAIO type Pのようにスティックポインターを搭載した機種もあります。

 一般的に、タッチパッドの手前にはマウスボタンに相当するボタンがありますが、スペースの関係からタッチパッドの横に配置してある機種もあり、慣れないと気になることがあります。また、ボタンをタッチパッドと一体化させた機種(デル「Inspiron Mini 10」など)もあります。

 タッチパッドの面積や位置は、キーボードを打ちながら操作しやすく、意図せずに触ってしまうことがないものがおすすめです。ポインティングデバイスはキーボードと同様に好みが分かれやすいので、店頭の実機でよく確かめておきましょう。

 一方で、マウスを利用する方法もあります。最近では携帯性のよいマウスも増えており、Bluetoothマウス(こちらを参照)ならケーブルに煩わされることもありません。なお、「Eee PC」シリーズの一部など、標準でマウスが付属している機種もあります。

他機種に比べ縦幅が広い。ボタンのクリック感は硬め

タッチパッドとボタンが一体化。マルチタッチにも対応

0.ディスプレイのサイズと解像度

 ミニノートPCが注目され始めた当初は、ディスプレイのサイズが7〜8インチという機種が目立ちましたが、液晶の低価格化に伴って、2009年以降はより大きな9〜10インチが主流です。

 画面解像度は1,024×600ドットが中心で、ハイビジョンテレビのようなワイド画面を売りにした機種もあります。同じ画面解像度でも、ディスプレイのサイズが大きければ文字や画像は読みやすくなりますが、そのぶん本体のサイズも大きくなり、重量やバッテリーの持ちにも影響があることは覚えておきたいポイントです。

 横1024ドット以上の解像度があれば、ほとんどのWebページは縦スクロールだけで読めます。現在使っているPCの解像度を落として、シミュレーションしてみるのもよいでしょう。

10インチのミニノートPCの標準解像度(1024 × 600)で見える範囲

0.CPU性能とOS

 ほとんどのミニノートPCでは、CPUとしてインテルの「Atom」、OSとしてマイクロソフトの「Windows XP Home Edition」が採用されています。

 インテルのAtomプロセッサは、高速な演算処理よりも低価格・低消費電力、かつ搭載機器の小型・軽量化を重視しているCPUです。まさにミニノートPCのために開発されたCPUと言えます。

 OSはWindows XPより新しい「Windows Vista」に必ずしもこだわる必要はなく、Windows XPで十分という声が多いようです。そのため、マイクロソフトは出荷を終了する予定だったWindows XPのサポート期間を2014年4月まで延長しています。

 一方で、マイクロソフトは次期OS「Windows 7」がミニノートPCでも快適に動作することをアピールしており、2009年末に発売する見通しであると発表しています。

0.記憶装置の違いと容量

 最近のミニノートPCの記憶装置は、120〜160GBのHDD(ハードディスク)が主流です。データ容量を気にせず、一般的なノートPCとほとんど同じように使いたい方には、HDDがおすすめです。

 一方で、ミニノートPC全体に占める割合は減りつつありますが、フラッシュメモリを採用したSSD(Solid State Drive)を搭載した機種もあります。

 メカニカルな可動部があり精密な構造をしているHDDは、衝撃に弱く壊れやすい欠点があります。対して半導体であるSSDは可動部がなく、軽量で衝撃に強いのが特長です。さらに、データの読み出し速度が高速で、消費電力が小さいというメリットもあります。まさにモバイルでの利用シーンに適した記憶装置と言えます。

 SSDは同容量のHDDに比べて高価ですが、年々価格が安価になっており、選択肢として徐々に視野に入れてもよいでしょう。

0.拡張性(外部インターフェース)の有無

 ミニノートPCは携帯性を重視しているとはいえ、周辺機器と組み合わせて使うための拡張性も、使いやすさを大きく左右します。

 例えば、ネットワークに接続するための無線LAN、iPodや外付けDVDドライブを接続するためのUSBポート、デジカメのメモリカードから写真を読み込むためのメモリカードスロットなどです。

 ほとんどの機種がこのような外部インターフェースを備えていますが、USBポートの数などは異なります。必要な周辺機器と接続できるよう、カタログや実機でしっかり確認しておきましょう。

左側面には有線LANポート、USBポート×1、マイク・ヘッドフォン端子を備えている

右側面にはSD/MMCカードスロット、USBポート×2、外部ディスプレイポートを備えている

0.バッテリーの持ちとACアダプターのサイズ

 モバイル利用が中心となるミニノートPCでは、バッテリーの駆動時間も重要です。アスーステックの「Eee PC」シリーズは、全体的にバッテリーの駆動時間が長い機種が多いため、要注目です。機種によっては、別売りで大容量のバッテリーが用意されています。

 また、見落としやすいポイントとして、ACアダプターのサイズと重量があります。筆者の経験上、出張や長時間の会議に備えるため、ACアダプターも一緒に持ち歩く機会は多いものです。ただし、残念ながらACアダプターの詳細はカタログに掲載されていないことが多いので、店頭で調べるか、Webのレビュー記事などを参考にするしかないのが現状です。

小型化が図られ、約200gと軽量化も実現しているため持ち運びやすい

0.Microsoft Officeの有無

 Microsoft Officeがインストール済みか、オプションとして追加選択できる機種が増えています。マイクロソフトはミニノートPC向けに「Microsoft Office Personal 2007 2年間ライセンス版」を提供しており、これがインストールされたPCでは簡単な手続きを行うことで、2年間の期間限定でMicrosoft Officeを利用できます。

譲れないポイント、妥協できるポイントの見極めが大事

 以上のように、ミニノートPCを選ぶ際に検討すべきことはたくさんあります。ユーザーそれぞれの利用スタイルや好みが異なるので、どれを最優先にすべきかはなかなか決められません。

 参考までに、毎日PCを持ち歩く筆者が特にこだわるポイントを3つ挙げましょう。

1. 携帯性(サイズ・重量)
2. キーボードの打ちやすさ
3. いつも手元において使いたくなるデザイン

 理由は「慣れや工夫でカバーできない」「買った後で気に入らなくなると、まったく使わなくなってしまう」という可能性があるからです。無駄な出費にしないための最低条件と言えるでしょう。

 筆者は、毎日カバンに入れて持ち歩くPCの重量は1kg前後が限度と考えています。使い勝手の悪いキーボードでは、カバンから取り出す頻度も上がりません。外観も重要で、人に自慢できるくらいお気に入りのものでないと、持ち歩く気にはならないものです。

 とはいえ、これらはあくまで筆者の基準です。読者のみなさんも自身の判断で、もっとも適した機種を見つけてください。

[ヒント]スペックから見えてくる各メーカーの戦略

ミニノートPCのスペックをじっくり見てみると、各メーカーがさまざまな要素で個性を出していることがわかります。例えば、ディスプレイのサイズが9インチのモデルは、ほとんどの機種が1.1kg前後の重量で、軽さをかなり意識しているようです。逆に10インチのモデルでは、アスーステックの「Eee PC 1000HE」のように1.45kgと重量があるものの、標準バッテリーで約9.3時間とバッテリーの駆動時間にこだわりを感じられるなど、各社各様に個性を打ち出しています。また、レノボ・ジャパンの「IdeaPad S9e」のように、実勢価格が39,800円前後と戦略的な低価格に設定されている機種もあります。こうした各メーカーの戦略を読み解いていくことも、機種選びの楽しみの1つです。

[ヒント]モバイルブロードバンド内蔵モデルにも注目

従来、モバイルブロードバンドを利用するには、外付けのデータ通信アダプターを別途購入するのが常識でした。しかし2009年に発表されたミニノートPCでは、モバイルブロードバンド機能を内蔵したモデルが登場しています。例えばソニーの「VAIO type P(ワイヤレスWAN内蔵モデル)」やアスーステックの「Eee PC 1003HAG」などでは、NTTドコモのFOMAネットワークに接続できるデータ通信モジュールが内蔵されています。モバイルWiMAXでも同様の取り組みが予定されているため、今後の動向に注目です。